この記事では、統計検定1級の統計数理を最優秀成績賞で取得した私が、統計検定1級(統計数理)の攻略法について紹介したいと思います!
1級合格を目指す方の力になれれば幸いです。
統計検定のラスボス、1級を攻略する上で必要なことを余すことなく伝えられたらと思います!
ちなみに、数理・応用両方で最優秀成績賞を取得しています!
応用は医薬生物学分野を選択しましたが、この分野は統計数理とはまた別物と考えていいと思うので、別の記事にまとめています。
統計応用が気になる方は是非、こちらの記事をご覧ください!
使った書籍も最後に紹介していますので、もしよかったら参考にしてみてください!
- 日本統計学会公式認定 統計検定準1級対応 統計学実践ワークブック (日本統計学会編)
- 明解演習 数理統計 (明解演習シリーズ) (小寺平治 著)
- 現代数理統計学の基礎 (共立講座 数学の魅力) (久保川達也 著)
- 日本統計学会公式認定 統計検定1級対応 統計学 (日本統計学会 編)
- 日本統計学会公式認定 統計検定 1級 公式問題集[2019〜2022年] (日本統計学会 編)
- 日本統計学会公式認定 統計検定 1級・準1級 公式問題集[2018〜2019年] (日本統計学会 編)
- 日本統計学会公式認定 統計検定 1級・準1級 公式問題集[2016〜2017年] (日本統計学会編)
- 日本統計学会公式認定 統計検定 1級 公式問題集[2014〜2015年] (日本統計学会 編)
1級を受ける上で知っておくべきこと ~統計数理編~
まず、1級(統計数理)を受験する上で知っておくべきことが3つあります。
- 準1級と1級は別物。
- だけど、準1級対策の勉強が1級対策の基盤となる。
- 1級、特に統計数理は、大学レベルの微積分の力が求められる。
1.まず、これは有名な話ですが、準1級と1級は全く別の試験と思っていいです。準1級は広範な手法の特徴や使い方といった知識的な要素が強いです。もちろん、数値計算もありますが、数値計算の部分は2級の範囲の統計的推定や仮説検定などが中心です。これに対して、1級の統計数理は、統計学の基盤となる、確率分布や推定量などに関する計算が中心となります。
2.準1級と1級は別物ではありますが、準1級対応のワークブック(特に前半部分)は1級対策にも非常に有用です。詳しくは準1級対策記事に書いてますので、興味があったら見てみてください。私自身、ワークブックを完璧にしていたおかげで、数理統計の参考書の理解もスムーズでした。
3.これも有名な話です。何なら、大学レベルの微積分に自信があれば、計算力でゴリ押せると思います。ただ、高校時代に数Ⅲまで学んでいる場合は、大学レベルの微積分の参考書が必要かというと、いらない気もします。実際、私も使いませんでした。問題を解くにあたって必要な微積分の知識は、ある程度限られているので、問題演習しながらネットやYoutubeで調べていけば事足りると思います。高校時代に文系だった方などは、まず、高校数学の数Ⅲの内容を学んでおきましょう。基礎計算力がものを言う試験なので、怠らずしっかりやりましょう。
また、線形代数の知識も必要ではありますが、重要度で言えば、微積分>線形代数だと思います。私自身、参考書の内容を理解するために、その都度調べていましたが、計算の仕方は最後までよくわからないところもありました。ただ、時間に余裕があるなら、線形代数もしっかりやっておくべきです。問題の選択の幅が広がるのは間違いないです。(統計数理は5問中3問を選択で、私の時も行列計算が出てきて、それ以外の4問から選ぶことになりました。)
また、準1級と1級の違いは以下の記事で詳しく説明しておりますので、是非ご覧ください!
1級受験体験記 ~統計数理編~
勉強法の前に、受験体験記から書いていこうと思います。
勉強法は体験の中で培っていくものなので、勉強法を語る上では体験記も欠かせないと思ってます。
ここでは受験前について絞って書きたいと思います。受験当日どのように解いたか知りたい方は、以下の記事をご覧ください!
さて、1級合格までの足跡を紹介した記事でも書きましたが、私が1級を目指し始めたのは、2021年の6月に準1級を受験した直後からです。大学の試験などであまり時間が取れなかったのですが、はじめに『明解演習 数理統計学』(小寺平治著)を使って、演習してみました。
例題108問を解くことで、数理統計の計算がどのようなものかイメージがつきました。
次の段階として、『現代数理統計学の基礎』(久保川達也著)を読み始めました。9章までの内容を読みながら、演習問題を解くという感じで進めていきました。
演習問題は、2~8章までの問題で、よっぽど必要なさそうな問題は解いていませんが、ほとんど解いたと思います。
当然ながら1周目では、なかなか解けないので2周する前提で解いてました。
大学の試験の関係もあり、なかなか勉強が進まなかったです。1か月前くらいの段階でこのままでは間に合わないと感じ、隙間時間はすべて統計検定の勉強に充てました。
頑張れば、どんなに忙しい日でも2~3時間は勉強時間を取れるので、毎日少しでも勉強することを意識してました。
基本的に『現代数理統計学の基礎』を読んで演習問題を解いて、解法に至る思考のプロセスを頭に叩き込むことを徹底しました。
2週間前になって過去問を本格的に解き始めました。それ以前から、合間合間で過去問をチラ見して出題の雰囲気を確認していたので、直前ではありましたが、不安はそこまでありませんでした。
過去問は4、5年分やりました。時間を90分測って本番形式で3問選んで解き、その後、選択しなかった問題は1問25分で測ってやりました。
直前まで、『現代数理統計学の基礎』の演習問題のやり直しと、過去問演習を行って本番に臨みました。
勉強法 ~統計数理編~
自分に合いそうな部分を参考にしていただければと思います。
前提として意識するべきこと
まず、意識することは2点あります。
- 2級の攻略記事でも書きましたが、大事な力は自己分析力と論理的思考力です。自分に足りていない知識や考え方を冷静に分析し、それを解消するにはどういう努力をどのくらいするべきかを論理的に考える力です。
- 演習問題は限られています。そのため、1問解くことで、他の問題にも対応できる力をつける必要があります。問題を解いて解説を読む過程で、その解法に至る思考プロセスの構築方法を身につけます。イメージとしては、設計図を覚えるのではなく、設計図の作り方を身につける感じです。そうすれば、初めて作るものでも設計図を1から作れます。
やったこと
やったことは以下の4つで、時系列順に並べています。
- 初めに『明解演習 数理統計学』(小寺平治著)の例題を解くことで、数理統計における計算がどのようなものかイメージを付けました。
- 『現代数理統計学の基礎』(久保川達也著)を読み込んで、演習問題を解けるようにします。
- 過去問を解いて、自分の勉強の方向性が間違っていないかを確認します。
- 試験直前に確認するA4 1枚のチェックリストを作っておきます。
順に解説していきます。
1.どのような知識が自分に必要か見極める段階です。微積分や線形代数など、問題を解く上で必要な道具のうち、自分に足りないものを確認します。例題の解答の隙間に、必要な微積分の知識などがあればメモしておきました。これをすることで、必要な道具は意外と少ないということに気づきました。例題自体も良問がそろっているので、2が終わった後に確認して、何回か解いた問題もあります。
2.ここから本格的に数理統計学の理解を深めて、実際に問題を解けるようにしていきます。1周目では解けないことが多いですが、どうすればその解法を1から構築できるかをイメージしながら解説を見ます。思考のプロセスでポイントになるところがあれば、問題の横にメモしておきました。2周目が終わる頃には完璧にできることを目指します。それ以降は、問題を見たときに解法の構築手順を言葉で説明できるようにアウトプットします。計算の手順やポイントに加えて、他に考えられる出題の仕方とそのときの対処法まで、問題を見た瞬間に出てくるようにしておけばもう恐いものはないと思います。もちろん実際に計算できるか不安なことも多いので、その都度手を動かして計算もしておきます。
3.努力の方向性が間違っていなければ、2を終えた段階で過去問も解けるはずです。ここで解けなければ、また方向性を正して2に戻る必要があります。この時に自己分析力が大事です。「なぜその問題ができないのか、どうすればできるようになるか」の答えは、人それぞれ違うので、しっかり自己分析しましょう。論理的に考えていけばきっと答えが見つかると思います。
4.2や3をやっていく中で、自分のミスの仕方や、それを防ぐやりかたをA4 1枚に箇条書きにまとめておきました。ミスの傾向には、その人特有の癖があり、無意識化でその癖に引っ張られます。試験直前にメモを見ることによって、外部からそれを意識化させます。これで格段にミスは減ります。ポイントは「A4 1枚で箇条書き」です。一見するだけで情報が全部入ってこなければ、結局無意識化に情報が埋まってしまう気がします。まとめノートなど作る人がいますが、個人的には、やめておいた方がいいと思います。まとめノートは、自分のバイアスで参考書の情報を落としてしまいます。勉強において大事なことは、自分のバイアスで落とした情報に気づくことです。人間の脳は一旦いらないと認識すると、永遠に覚えられないです。私は、「自分が無意識に落とした情報に気づくこと」が、試験勉強の本質だと考えています。つまり、まとめノートは本質的ではないということです。ポイントになりそうなことは、参考書に書き込めばいいと思います。そうやって自分だけの参考書を作れば、まとめノートなんていりません。試験直前3分で見返せるくらいならいいと思いますが、それなら、A4 1枚のチェックリストを作る方が、得点の期待値を上げられるような気がします。
Tips
勉強法の最後に、ちょっとしたtipsを書こうと思います!
・主要な確率分布の、期待値、分散、モーメント母関数はすぐに導出できるようにしておきましょう。
・変数変換は流れるようにできるようにしときましょう。
・試験は(3)くらいまでは典型問題のことが多いので、上2つをしっかりするだけでだいぶ解けます。(もしかしたらそれだけで合格できるかも?)
・初学者から1級合格を目指す場合は、2級、準1級と受けていくことをおすすめします。その方が、結果として近道になると思います。それぞれの種別を完璧にすることが、次の種別のスムーズな勉強を可能にします。それに、せっかくなら完璧に準備して最優秀賞を目指した方が、ただ合格を目指すよりしっかり知識も定着します。「合格したけどよく分からない」は学問として本質的でない気がします。2級と準1級の攻略記事も書いてますので、興味がある方は是非ご覧ください!
使った書籍 ~統計数理編~
使った書籍を紹介します!
日本統計学会公式認定 統計検定準1級対応 統計学実践ワークブック (日本統計学会編)
ワークブックを完璧に仕上げておくことが、1級の合格への近道です。また、様々な統計的手法を網羅的にまとめてあるので、持っておいて損はないと思います。
明解演習 数理統計 (明解演習シリーズ) (小寺平治 著)
勉強法のところで出てきた本です。古くからある本ですが、内容もわかりやすく、準1級から1級の橋渡しにちょうどいいと感じました。
現代数理統計学の基礎 (共立講座 数学の魅力) (久保川達也 著)
これのおかげで合格できました。演習問題の解答はネットにあります。ダウンロードしてiPadで見てました。分布関数や標本分布、分布収束など導出、証明を丁寧に行っていて、参考書としても素晴らしいです。演習問題のレベルも簡単すぎず、ちょうどいいと思います。
日本統計学会公式認定 統計検定1級対応 統計学 (日本統計学会 編)
範囲を知る上で、持っておいた方がいいとは思います。統計応用の方では、参考にする部分も多かったですが、統計数理ではほとんど使いませんでした。一応持っておきましょう。
日本統計学会公式認定 統計検定 1級 公式問題集[2019〜2022年] (日本統計学会 編)
最近1級だけをまとめたものが出ました!
自分の時にも欲しかったです。笑
ただ、2018年以前のものは、1級と準1級一緒のものしかなさそうです。
日本統計学会公式認定 統計検定 1級・準1級 公式問題集[2018〜2019年] (日本統計学会 編)
過去問は必須です。準1級受験の際に購入したものを使いました。準1級だけをまとめたものが発売されたみたいなので、その内1級だけまとめたものも発売されそうですね。←発売されました!
過去のものも購入して、大体4~5年分解きました。
日本統計学会公式認定 統計検定 1級・準1級 公式問題集[2016〜2017年] (日本統計学会編)
これも準1級が入ってます。準1級合格後に購入したのですが、1級だけにして安く発売してほしかったです。
日本統計学会公式認定 統計検定 1級 公式問題集[2014〜2015年] (日本統計学会 編)
2015年以前のものは、1級だけまとめたものがあります。
番外編 ~データサイエンスやKaggleにむけて~
統計検定を受ける人の多くは、データサイエンスやAI、機械学習に興味がある人が多いと思います。
そういった方の多くは、データサイエンティストを志していたり、Kaggleでのメダル獲得を目指していたりすると思います!
なので、ここでは、データサイエンス、機械学習等の勉強についても軽く触れておきたいと思います。
統計検定1級を志すレベルであれば、座学のレベルはかなり高いと思います。したがって、あとは実践力だと思います。
私自身、Kaggleで銀メダルを獲得していますが、コンペに参加するとなると、かなりの実践力が必要だと感じました!
動画講座について
書籍で学ぶことも有用です。
しかし、結局実践できないと意味がないので、理論とコードを書くことを同時に進めておくといいと思います!
その意味で、コードを書いて実践する場として、動画講座を利用するのはかなり有効です!
他の記事でも紹介していますが、おすすめはUdemyです!
Udemy
まずは、Udemyです!知っている方も多いとは思いますが、動画講座の鉄板です!
セール中であれば、1000~2000円で講座を買えるので、お財布にもやさしいです!
個人的には、「かめれおん」さんの講座が激おすすめです!この方の講座はセール対象にはならないですが、講座の完成度がレベチです。上のリンクでかめれおんで検索すれば出てきます!
講座を全部受講すれば、冗談抜きで、AIエンジニアやデータサイエンティストとして働けるレベルになれると思います!
講座を全部受講すれば、冗談抜きで、AIエンジニアやデータサイエンティストとして働けるレベルになれると思います!
Udemyのおすすめ講座については以下の記事にまとめたので、興味があれば是非見てみてください!
ただ、勘違いしてほしくないのが、書籍での勉強もめちゃくちゃ大事です!
動画では聞き流してしまうところも、じっくり腰を据えて勉強できるので、自身の理解があやふやなところがよくわかりますし、数式を追っていく訓練にもなります。
なので、個人的おすすめは、動画講座と書籍のハイブリッドです!
機械学習のおすすめ本こちらの記事で紹介してますので、是非ご覧ください!
さいごに
統計検定1級(統計数理)の攻略法ということで書いてみましたが、あくまで1人の体験談なので、参考するにとどめてもらえればと思います。
少しでも、統計検定取得を目指す方々のお役に立てればうれしいです。
1級取得目指して頑張ってください!!
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